2020-01-01から1年間の記事一覧

第46話 笑顔

「準備はいい?」「おう!」「じゃあ!いくわよー!よーーーい!どん!」 その合図とともに、走り出すふたり。しかし、哲はすぐに砂に足をとられ、見事に転んだ。「きゃー、哲ちゃん」 駆け寄る葉菜「もおー何やってんだよぉ」 呆れながら、やってくる生意気…

第45話 一緒に

「あの日の事は、今でもはっきり覚えてる…嬉しくて嬉しくて、どうしたらいいのか解らないくらいドキドキして…」波音が静かに響く。「時が流れて…いろんな事がたくさんあって…忘れてしまった事もたくさんあるわ。だけど、あの日の事は、ずっと覚えてる…」葉菜…

第44話 あの日

[あの日]「じゃあさ、今度の休み車でどこかに出かけない?そうだな海に!」彼が約束してくれた!嬉しい!次の日、いつもと変わらず挨拶をした。大丈夫かしら?約束を覚えてるかな?そうだメモで聞いてみよ!「昨日の約束覚えてる?」「もちろん!!」良かっ…

第43話 泣けない葉菜

そして、俺は病魔に侵された自分の体とさよならをした。葬儀やら、なんやらでバタバタする。葉菜は、泣く事はなかった。葬儀が終わり俺の遺骨が安置されるとその遺骨の前でずっと、座り込む日々が続いた。家族が心配して声をかけても、あまり反応がない、大…

第42話 約束

それは、真夏の暑い日だった。俺は珍しく気分が良かった。葉菜に膝枕をしてもらい、濡れ縁に出て庭を見ていた。軒先の風鈴が小さな風に揺れて”チリリ~ン”と涼しげな音を鳴らす。大樹が、走って俺の前に来る。「パパ!僕!蝉をとったよ!ホラ!」汗まみれで…

第42話 約束

それは、真夏の暑い日だった。俺は珍しく気分が良かった。葉菜に膝枕をしてもらい、濡れ縁に出て庭を見ていた。軒先の風鈴が小さな風に揺れて”チリリ~ン”と涼しげな音を鳴らす。大樹が、走って俺の前に来る。「パパ!僕!蝉をとったよ!ホラ!」汗まみれで…

第41話 頼み

そんな日々の中、俺はどうしても、哲に伝えたい事があった。迷いに迷ったが、このまま死んでも悔いが残ると、意を決して誘った。場所は母屋の二階の俺の部屋。葉菜が「着いていこうか?」と心配したが「いや、いい…自分の足で行く!」と断った。俺は母屋の一…

第40話 五年の歳月

そして、五年の歳月が経った。俺は葉菜の奇跡で、入退院を繰り返しながらも、医者も驚くほどの生命力で生きながらえていた。生まれた子供は男の子だった。名前は生まれる前から性別を聞いて、散々考えた挙句『大樹(たいき)』と名付けた。太く逞しく大きな樹…

第39話 祝言

二週間の間に俺は、転院先の病院に行ったり、連絡してなかった、岩下に電話をしたり、後、少しでも収入をとパソコンで副業も始めた。と葉菜は、「そんなに、無理しなくても…」と心配したが、「多少の貯金は貯めてきたけど、まったく、無収入ってわけにはい…