第46話 笑顔

「準備はいい?」


「おう!」


「じゃあ!いくわよー!よーーーい!どん!」


 その合図とともに、走り出すふたり。しかし、哲はすぐに砂に足をとられ、見事に転んだ。


「きゃー、哲ちゃん」


 駆け寄る葉菜


「もおー何やってんだよぉ」


 呆れながら、やってくる生意気ざかりな大樹


「大丈夫?」


 葉菜が、哲の砂をはらう。


「うわぁ!ペッペッ!口にまで砂が入った!」


「もお、哲ちゃんたらぁ!ウフフ…アハハハ。おっかしい~」


 葉菜が笑った!


 大樹も笑う。


 哲も照れ笑いをする。


 三人して、海辺で笑う。


 あの日と変わらない海で君がようやく笑った。


 


 


 そう!葉菜。その笑顔が見たかったんだ。

 涙の乾いた君が目を輝かせ俺に見せるその笑顔。


  雨上がりに滴る雨の雫に

 太陽の光が乱反射するように眩しい…


 俺が何度も恋をした君のその笑顔に会いたかったんだ。


 


 葉菜…愛してるよ。


 


 ずっと一緒に居られなくて、ごめん。これからは、哲や大樹と長く幸せな時間を生きていくんだ。


 


 温かい闇が俺を包みこむ、葉菜、まるで君の温もりのように優しく…温かい……


 深い深い睡魔が俺を誘う。薄れゆく意識の中で


 


 葉菜………。君の声が聞こえる。


 


 


「大丈夫よ。目が覚めた時もここにいるから」


 


 


 そうだ葉菜、目覚めたら


                         また君の笑顔に会える……